小間歯科医院の目指すもの
-病理的壊れを排除し、生理的壊れだけにすることを「健康」と世間ではいう。その究極が不老長寿なのです。壊れゆくものたちを慈しむ-
32年前、広島大学歯学部の学生であった私は、生化学の奥田九一郎教授が、熱力学第2法則『宇宙のエントロピーは、インマー増大する』と話されたことに衝撃を受けました。黒板の前で、ドイツ語交じりに講義される先生のお姿を今でも鮮明に思い出すことができます。エントロピーとは、「系の無秩序さの度合を表す状態量」であり、「インマー」は、「絶えず」という意味のドイツ語です。つまり『宇宙は、壊れ続けている』という内容です。これは、以下のような意味だと解釈しました。
熱力学という自然現象の規則性を研究する分野があります。宇宙も、地球も草花も、動物も、あなたの体も、お口の中も、歯も、歯茎も全て同じ法則の下に存在しています。自然現象には方向性があります。水は、高いところから低い所に向かって流れるように、無秩序さは、絶えず増大していくというものです。つまり、宇宙も生物もわれわれも歯も歯茎も絶えず壊れており、壊れ続けているのです。エネルギーは、壊れることのために使われ続けるのです。つまり全てのモノのエネルギーレベルは、下がり続けるのです。
地球誕生から46億年、生命の誕生から40億年。壊れ続けてきたのです。あなたの誕生から成長のピークまでの間にも、形態が大きくなることに目を奪われているときにも、そしてピークを過ぎ生命が朽ち果てるまで、ひたすら壊れ続けているのです。
所詮壊れていくのなら、虫歯も歯周病も放っておけばいいのでしょうか。あるいは適当に治療しておけばいいのでしょうか。それは、間違いです。
「壊れる」スピードに違いが出てくるからです。
「壊れていく」という自然現象の方向性から逃れられないとすれば、虫歯や、歯周病などのお口の中の出来事も、その治療方法も、熱力学的という物理的な法則を含めた自然科学的視点に立って捉え、あなたのお口の中の逃れることのできない「壊れる」という現象をよりゆっくりにできることを目指そうではありませんか。つまり病的な「壊れ」や未病といわれる「壊れ」を排除し、生理的な「壊れ」だけを目指す。「ゆっくり壊れる」、それを世間では「健康」といい、「安定」といい、科学的な不老長寿の本質であり、小間歯科医院の目指すところです。
形態や機能に問題が起こった時には、歯を削ったり、神経を取ったり、根の治療をして、歯を回復させます。つまり人為的に「壊す」ことにより、エネルギーレベルを下げて、機能的あるいは審美的な回復を得るのです。そこで、できるだけ壊さないように、エネルギーを失わないようにするのですが、ここで重要なことは、どこまで「壊す」ことが、それ以後の「壊れる」スピードをゆっくりにするかを考えます。つまり、虫歯になった時、歯を削ったり、抜いたりしたところを埋めたり被せたりする。そのときできるだけ歯を残していきたいのですが、何を目指すかで大きく削ることもありますし、究極は抜歯をすることもあります。お口全体の機能や美しさを維持するために、個々の歯にとってはやむを得ない選択もあるのです。歯の治療とは、歯を壊して、元の形に戻しているのです。人間が自然界のモノに手を入れるということは、何かを犠牲にしないと成り立たないんものです。胃ガンになった胃の部分を切除して、つまり壊して、残った胃を残し使っていこうというのに似ているかもしれません。
しかしながら「壊れる」現象に悲観することはありません。小間歯科医院は、医院の総力を挙げて、あなたの「壊れる」現象をよりゆっくりにすることを目指しているからです。
それぞれのゆっくり壊れる具体的な治療方法は、別の機会にお話しさせていただきますが、歯も歯茎も壊れるスピードを少しでもゆっくり壊れるようにするにはどうすればいいのでしょう。そうです、予防をしましょう。メンテナンスしませんか。予防をしてもメンテナンスしても壊れていきますが、そのまま放置するよりも「壊れ」をゆっくりにすることができます。毎日のセルフケアとプロフェッショナルケア。定期的に、バイオフィルム(プラーク)を除去することをお勧めするのです。治療終了したときから次の「壊れ」が始まっていくのですが、その発想がゆっくりになるような治療方法を選択し、ゆっくり壊れるようにメンテナンスする。そうやって「安定」を目指そうではありませんか。
このように小間歯科医院の治療方針は、自然科学を基盤に据えますが、機能や審美だけを優先させるのではなく、気持や心という見えない世界もお口の周りの風景として捉え、それら風景との調和もお計りし、表現できればと考えています。



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